7.冬の朝
ユフィが選んだブルーの皿に、こんがり焼けたトーストを乗せた。
バターの方が味は良くなるが、塗りやすさには勝てずもっぱらマーガリンだった。全面にくまなくたっぷり、しかし塊は残らないように。ユフィの好みだ。
「たまごとベーコン! どうする? 乗せちゃう?」
「乗せる。もう一枚焼いて挟む」
「もうホットサンドじゃんそれ! でもいいな、アタシもそうしよ」
フライパンを振るうユフィの手元へ2枚の皿を置くと、ヴィンセントはトースターに再び食パンを放り込んだ。棚から新しいマグカップを出して湯を注ぎ、インスタントのカップスープの箱を開ける。
「あ、昨日の残りのサラダあるから出しといて」
「わかった」
小さな冷蔵庫の前にちまっと屈むヴィンセントの姿が面白く、ユフィは毎回笑ってしまうのだった。ヴィンセントは素知らぬ顔でサラダボウルを取り出し、べりべりとラップを剥がす。食べきれる量なのでいいだろうと、そのままドレッシングをかけてしまってから、テーブルへ持っていく。
「よし、今日もカンペキな半熟」
蕩けて光るマーガリンが、ぽんと降ってきたベーコンと目玉焼きに覆い隠される。隣で茹でていたウインナーもその横にせっせと盛ってから、ユフィは皿を押しやった。デキる女はキッチンペーパーを千切ってささっとフライパンを拭いておく。
トースターを覗いたヴィンセントが、少し首を傾げながらトーストを取り出した。またマーガリンを塗って、ユフィ渾身の目玉焼きを潰さないようふんわりと重ねる。
「持ってくね」
「頼む」
皿をユフィに託し、ヴィンセントはマグカップの湯をシンクに捨てた。中にカップスープの素をあけ、新しい湯を注ぐ。
ユフィのは濃いめに、自分のは薄めに。
色違いのマグカップは初仕事を誇るように輝いた。
「さ、食べよ食べよ!」
朝陽を浴びて食卓のユフィが笑う。
幸せの縮図とも言うべき光景へ、ヴィンセントは二つのマグカップを手に一歩を踏み出した。
