【FF7】VYアドベントカレンダー 12/07~12/12 - 6/7

11.冬の夜

 

ユフィがシャワーを終えてバスルームを出ると、リビングのソファにヴィンセントの姿はなかった。
だが気配はある。不思議に思ってユフィはきょろきょろと辺りを見回したが、キッチンにも寝室にもいない。

「あ」

ユフィは思いつき、リビングにある大きなカーテンをめくった。そこはベランダへの掃き出し窓だ。きっちりと閉められているそのガラス窓の向こうに、柵にもたれて外を眺める探し人の姿があった。
カーテンが開いたせいだろう、ユフィが合図するまでもなく室内を振り返ったヴィンセントは、ガラス越しに微かにやわらかな笑みを浮かべた。その息が白い。
彼は手でユフィに下がるよう促してから、素早く窓を開けて室内へと滑り込んでくる。ほんの一瞬吹き込んだ冬の空気に、ユフィは風呂上がりの身体をふるりと震わせた。
窓の鍵を掛け直し、防寒を考えてか几帳面にカーテンの端を伸ばしているヴィンセントの背中に、ユフィはそっと手を触れた。

「冷たっ。もー、いくらアンタでも風邪引かないとは言えなくなってんのに」
「これからシャワーを浴びる」

ユフィの小言にそう返し、ヴィンセントは軽く肩をすくめた。

「星、見てたの?」

昔――まだ旅をしていたころ、ヴィンセントがよく一人で夜空を見上げていたことを思い出し、ユフィは問いかけた。
あの頃のユフィはそんな彼を見かけるたび、そっと忍び寄ってはちょっかいをかけに行ったものだった。まだ彼とこんな関係になるだなんて思ってもいなかった時代の、しかし今では大切な思い出の一つだ。

「……いや」

ヴィンセントは何かを思い出すかのように目を細め、かぶりを振った。

「星はあまり見えない。もう、街が明るいからな」

穏やかな赤い瞳に滲むのは失望や物足りなさではなく、安堵に近い何かだ。

「……そっか。そだね、エッジもすっかり賑やかになったもんね」
「ああ。人の営みとは逞しいものだ」

かつてエッジは名もない避難集落だった。崩壊した大都市ミッドガルから命からがら逃れてきた人々が身を寄せ合い、テントを張りバラックを建てるところから始まったのだ。
WROが発足して住宅と仕事を供給し、インフラが通ると、今度はその活気を求めて余所から人が集まるようになった。無論かつてのミッドガルには及ばないものの、今ではエッジは、世界に名だたる規模の都市へと成長しようとしている。
その光一つ一つの下に人々の営みを宿し、星空よりも明るく連なるあたたかな夜景は、まさしくその象徴といえた。

「そーいえば、今年からイルミネーション――光る飾り付けが解禁になって、セントラルで大きいのやるんだって」
「見に行きたいのか? だが夜だろう、寒いぞ」
「うっ、厚着するからさぁ。屋台もいっぱい出てるっていうし」

ね? とユフィの必殺上目遣いのオネダリが炸裂し、ヴィンセントは苦笑する。

「わかった。場所は調べておいてくれるか」
「やったあ!」

小躍りして携帯を取り出すユフィを残し、ヴィンセントは身体を温めるべくバスルームへと向かった。

 

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