【FF7】VYワードパレット 01~06 - 6/6

[06.プリエール(祈り/フランス) 気づく・指輪・横顔

 

泉に湛えられた水はどこまでも透明なのに、その深さは杳として知れなかった。凪いだ水面に映る化石化した都の姿がいつもあまりにも鮮明で、薄く揺らめく膜の向こうへどこまでも続いていくかのようなのだ。
『浪の下にも都がある』そんな古典の言葉を、ここへ来るとユフィは思い出す。それは命を途半ばで断ち切られた者たちが辿り着く場所なのだろうか。彼らはそこで、安らいでいるのだろうか。
不意にふわりと芳香が立ち、ユフィははっと腕に力を込めた。抱えた大きな花束はエッジであつらえたものだ。花弁を散らさず運んでくるのには相当気を使ったのだから、ここで落として台無しにするわけにはいかない。
ユフィは改めて泉の中へと足を踏み入れた。泉下の世界が大きく歪む。濡れるのも気にせずざばざばと中央まで進むと、水面にそっと花束を下ろす。
けぶる粉雪のような白、星型に華やぐ黄色、珍しい大輪の薄紅。艶やかな緑の葉と藍色の薄紙で包まれた花束は、この無彩色の視界においてまさしく鮮やかな生の息吹だった。
ユフィの手に押し出され、花束がすい、と水面を滑っていく。それを見送りながらユフィは静かに掌を合わせると、目を閉じた。

――エアリス。報告に来たよ。

ユフィは心の内でその名を呼んだ。
ユフィが最後に見た生きている彼女は、湖底の祭壇に跪き祈っていた。近づいてくるクラウドに気づき顔を上げ、微笑んだのだろう横顔だった。
今にして思えば、ユフィが彼女と過ごした日数なんてほんのわずかだった。あの忙しく短い旅のせいぜい半分に過ぎず、思い出がもう増えることはない。
けれど彼女の笑顔は、今もユフィの中で鮮烈に息づいている。それこそ一年のわずかな間だけ美しく咲き誇り、その使命を果たして落ちる花のように。

目を開けると、花束は水面に色の名残だけを残して沈んでいくところだった。
白、黄色、薄紅、緑。それらの色は人々が窮地に立たされながらも生き続け、今では花を育てるという余裕までを取り戻したひとつの証だ。
ユフィは左手の指輪を撫でた。今のこの平和の陰に幾度もエアリスの助力があっただろうことを、ユフィは、仲間たちは決して忘れない。

「また、来るからね」

まるで応えるかのように、やわらかな風が水面を揺らした。

 

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