【FF7】ユフィ・キサラギはデートしたい! - 3/5

ユフィ・キサラギさんはお祭りでデートしたい。(7本編中)

 

宿を取った村から少し離れた岩場で、黒々としたマントの影が三日月を背にして立っている。

「アンタよくそうしてるよね」
「……ユフィか」

夜闇に紛れて背後から突然声をかけたとしても、ヴィンセントはめったに驚いたりしない。彼がひときわ気配察知に長けているのは仲間内でも周知の事実だ。忍ぶ者と書いてニンジャのユフィとしては悔しいことに、今のところ出し抜けたためしもない。

「星、好きなの?」

ユフィは何気なしに問いかけた。
ヴィンセントはよく夜空を見上げている。時にはわざわざ高所にまで上っているのを、ユフィはたまたま目撃したことがあった。
だが、返ってきたのは少し意外な言葉だった。

「……好きと言えるほど、星そのものには詳しくない。美しいとは、まあ、思うが」

彼はユフィを振り返った。星明かりの下で、黒髪とマントに埋もれた顔だけが白い。
重々しい服装に加えて顔のつくりが整いすぎているせいか近づきがたい迫力があるが、そう見えるだけなのだとユフィはもう知っていた。何も気にせず歩み寄る。

「ふぅん? でもいっつもよく見上げてるよねぇ。こういうとき、何考えてるの」

ユフィにずけずけと問われても、ヴィンセントは特に気を悪くする様子もない。こういう男なのだ。
ほぼ同じ位置に立って、ユフィも空を見上げてみる。空気は季節柄少し霞んでいるが、晴れ上がったきれいな星空だ。

「星座や星につけられた名前がある。その由来となった逸話のことを、思い出していた」
「神話とかってこと?」
「そうだな」

ほへー、とユフィは間抜けな声を上げた。

「ヴィンセントってもしかして本読むの好き?」
「ああ。子供の頃にそういう話をよく読んでいたんだ」
「割と想像できる気がする、ていうか似合う」

ユフィの脳裏に、お人形のようにきれいな顔の黒髪の子供のイメージが浮かんだ。一日中だって大人しく本を読んでいそうだ。

「アタシはダメだなぁ。本、読んでおけって言われると身体がムズムズしてきちゃって」
「それこそ想像できるな。興味を持てなければそんなものだろう」

ふ、と笑みを含んだ吐息が洩らされて、ユフィは横目でヴィンセントの顔を見た。さすがにこの暗さではよくわからず、残念に思う。

「アタシが知ってる星の話ってったら、七夕くらいかなぁ」
「たなばた?」
「もろウータイ語なのにヴィンセント発音うまいね。知ってた?」
「いや、初耳だ」

ヴィンセントが興味深げに視線を寄越してきたので、いい気になってユフィは続けた。

「えっとね。織姫っていう機織りの女の人と、彦星っていう牧童の男の人がいてね。この二人はお互いに一目ぼれして恋人になったんだけど、毎日イチャイチャして仕事を放りだしたもんだから、実はエライ人だった織姫の父親が怒ってさ。二人の家の間にあった川の橋を壊して、渡れなくしちゃったの」
「ほう」
「そんで二人が反省したのを見たからだったか、嘆き悲しむ姿に耐えられなくなったんだかは忘れたけど、一年に一日だけなら会っていいよーって許しが出てさ。その日になると白い鳥の群れが川に橋を架けるんだって。そういう話。織姫ってのがこと座のベガで、彦星が何座だっけ、確かアルタイルって星」
「アルタイルはわし座だ。なるほどな。確かに、間に星の河がある」

ヴィンセントは夏の星座図を思い浮かべ、頷いた。ユフィの説明は適当だったが、神話や民話の類に雑や荒唐無稽はよくあることなので気にはならない。

「ウータイではその日に笹……っていう木を飾って夜にお祭りするんだよ」
「星見の祭りなのか?」
「昔はそうだったらしいけど、今はそうでもないかなぁ。お店も出るし、楽しいよ」
「フッ、お前らしい感想だ」
「誰だってそう思うって!」

憤慨するユフィを宥めるように、ヴィンセントはその肩を軽く叩いた。

「面白い話だった。感謝する。そろそろ戻ろう」
「もー!」

ユフィは収まりきらない不満を声に表しながら、歩き出すヴィンセントを追いかけた。
軽快に走って数歩を追い抜き、くるりと半回転してヴィンセントの正面に立つ。

「この旅が終わったらさぁ、次の七夕のお祭り、一回来てみなよ。案内してあげるよ」
「お前が?」
「浴衣……衣装も用意したげる! アンタたぶん似合うと思うし」
「……お前の服装センスはあまり信用できない」
「アンタが言うー?! この妖怪赤マント!」

マントを引っ張ろうと伸ばされるユフィの手をいなしながら、ヴィンセントは歩みを止めない。

「……旅が終わったら、か」

低い呟きは騒ぐユフィへ届くことなくマントの内側に消える。
明日をも知れぬ旅路の中で当然のことのように未来を語る彼女の強さに、ヴィンセントはひっそりと微笑んだ。

 

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