【FF7】VYアドベントカレンダー 12/13~12/18 - 5/7

16.映画

 

夕食後にユフィが何気なくテレビをつけると、映し出されたのは粒子の荒いモノクロ映像だった。

「ひぇっ」

壊れたのかと慌ててチャンネルを切り替えれば、そちらは問題なくいつも通りの画面だ。つまり。

「ああ、昔の映画やってるのかあ。びっくりしたー」

落ち着いてよくよく見れば画面比は小さいし、出演者の演技や服装も非常にクラシカルだ。それらが逆に物珍しく、ユフィはリモコンを手にしたままソファに座り、しげしげと画面に見入る。

「へえー、レトロ可愛い。こんなバイクも見たことないや」

ウエストを幅広のベルトで締めたロングスカート姿の美しい女性が、主人公と思しき男性を連れまわしながら街を満喫している。白黒の映画などユフィは初めて見るが、その画面表現はフルカラーにも決して負けてはいない。こんな時間に放送されているところをみると、よほどの名作映画なのだろう。
ユフィがコメディ調のストーリーをしばらく眺めていると、夕食の片付けを終えたヴィンセントがリビングへ戻ってきた。ちらりとテレビ画面へ動いた視線は特に驚いてもいない。ユフィの独り言が聞こえていたのだろう。

「ねえ、ヴィンセントの世代って白黒?カラー?」
「ミッドガルに居た頃はカラーだった」

ヴィンセントはユフィの隣に座ると、少し考えるそぶりを見せる。

「子供の頃はわからんな。過渡期だったかもしれないが、そもそもテレビがなかったのか、私が見なかっただけなのか、もう思い出せない」
「ふうん? この映画見たことある?」
「ある。有名だぞ」
「やっぱそうなんだ」

王女と記者、最初から結ばれるはずがない二人のたった一日の恋。非常に有名なラブストーリーだが、この様子を見るにユフィはまったく内容を知らないようだ。結ばれて終わるわけではないラストシーンを彼女はどう思うだろうかと、ヴィンセントはその横顔を眺めながらぼんやりと考える。
そう言えば、このユフィもある意味姫君ではあるのだ。映画の中の世間知らずな王女と、自ら国を飛び出した末に星まで救った女傑とを比較するのもどうかとは思うが、最後には義務を果たすために自ら国へと戻る、その精神は似ていると言えるかもしれない。
ヴィンセントが改造されることなく普通に生きていれば――生きていたとしても、世代が違うユフィとは、そもそも出会うこともなかっただろう。たった一日、恋に落ちて思い出だけを得た記者の男とどちらが幸せだろうか、と益体もないことに思いを馳せる。

「なぁに、ヴィンセントその顔。これもしかして悲恋のヤツ?」
「なぜそう思う」
「なんかちょっと寂しげな?考え事してるみたいに見えたから。あ、でももう戻っちゃったな、どっちなのさ?」
「さてな。私としては初見の貴重な感想を聞いてみたい」
「えー、途中からしか見てないのに」

文句を言いながらもCMが明けた画面に目を戻すユフィはなかなか真剣な顔だ。続きが気になるのだろう。
ヴィンセントはコーヒーでも淹れようかと立ち上がる。

「アタシカフェオレね」
「ああ」

背後からすかさず飛んできた声にヴィンセントは是と答えた。
記者の男がたとえ望んだとしても得られなかった幸せを、噛みしめながら。

 

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