【FF7】決別と再会 - 6/6

 

WROを大騒ぎに陥れた後、ヴィンセントは有無を言わさず三時間コースの検診にぶち込まれた。
局長の権力を振りかざしたリーブが全てを最優先としてねじ込んだためこれでも特急なのだと聞かされてなお、彼は渋面を隠しもせず、最後まではた迷惑に威圧感を振り撒いていた。
詳しい結果は後日、と前置きされた上で伝えられたのは、やはりカオスの因子が検出されないということ。関連は不明ながらその他の魔獣の因子も不活性となっているらしい、というものだ。
トラウマを刺激してやまない白衣の群れから解放されたヴィンセントは、ようやくいつもの落ち着きと無表情を取り戻していた。検査着から元の服へと着替えながら、赤いマントを手に取りしばし思案する。

「ヴィンセント、着替え終わったか?」
「ああ。……ありがとう」

コーヒーの紙コップを二つ手にしたシドが入ってきて、ヴィンセントに片方を渡す。シドはシミュレーションルームを出てから検査が終わるまで、ずっとヴィンセントの横で勝手に付添いをつとめていた。ヴィンセントを宥めているふりでその実医療班を牽制していた彼の配慮には気づいていたが、ヴィンセントが改まって礼を言ったところで、彼はしらばっくれるに違いない。

「マントがどうかしたか?」
「いや……服を、買わなければならないな」
「あーそうだな、もう勝手にゃ直らねぇか」
「どういう意味です?」

問いかけたのは、シドに続いて入ってきたシェルクだ。

「コイツのこの……赤マント一式? リミット技由来でできてるっつーか」
「理屈は全くわからんが、変身時の余ったパーツか質量か、とにかくそのあたりが変化したようなものだったのだろうな。だから、何と言えばいいか……今まではある程度思うように形を変えたり、動かせたりもしていて」
「服じゃなかったんですか?!」
「……身体の一部に近かったことは否定しない。だが今日はかなり邪魔だった」
「なるほどなぁ」

シドは外して置いてあるガントレットをしげしげと眺めた。これとブーツはガリアンビーストの爪の変化だろうとシドは勝手に思っている。マントはカオスの翼だ。

「お前今まで服の選択肢なかったもんなー。良かったじゃねぇか」
「便利ではあったんだが」
「おしゃれは不便だってユフィが言ってたろ」
「不便じゃなくてガマン! なに、何の話?」

遅れて飛び込んできたユフィがきょろきょろと皆を見回す。

「ヴィンセントの服が魔獣やカオスで出来ていたらしいという話です」
「何それ。あ、いやわかんなくもない」
「どっちだよ」
「ユフィも知らなかったのですか?」
「知らないけど……でもヴィンセントって変身して戻ると服も元通りだったから、なんとなく?」

意外と観察眼に長けたユフィはわざわざ聞かずとも、そういうものかと勝手に納得していたらしい。

「別に秘密でもない。聞かれれば答えた」

そう言ってヴィンセントはシドを顎で指す。

「だって気になるだろ。つーかお前、聞いてこないやつらはそれがお前の趣味だと思ってんだぞ」
「うっ、すみません……」

シェルクが身の置き場なく縮こまる。

「……私も嫌々着ていたわけじゃない。気にするな」

ヴィンセントにとっては、この手のマントは子供の頃から見慣れた、懐かしいものだった。記憶の中の父親の装束によく似ていたからだ。そのルーツは出身地の民族衣装だと聞いていた。

「ふうん? ああ、それなら髪も切れるんじゃねえのか」
「そうかもな。たまにはあんたくらい短くしてみるか」
「やめとけやめとけ、癖毛で大変なことになるぞ」
「えっヴィンセント、髪もなんかあったの?」

今度はユフィも驚きの声を上げる。

「変身したら毎回この長さに戻っちまってたんだよ」
「シド、詳しいですね……」
「だから聞いたんだって。むしろ、なんでそんな秘密のかたまりみてぇに扱われてんのかがわかんねぇわ」
「あんたは特に遠慮がないんだ。とは言え、聞かれて初めて考えることも多かった」

ヴィンセントは飲み終えたコーヒーの紙コップをゴミ箱へと放り込んだ。

「さてユフィ、店は決めたか」
「決めたけど今度でいいよ。それよりアンタの着せ替えしてセブンスヘブン行った方がおもしろそう」
「おもしろくはない……」
「髪も切るか?」
「……切った後回収して燃やしたいんだが」
「そりゃ店だとちぃと難しいな。仕方ねぇ、ティファにでも頼め」

シドはヴィンセントのマントとバンダナ、ガントレットを手際良くまとめてその辺にあったカゴに突っ込み、小脇に抱えた。

「とりあえず俺んトコのロッカーにでも入れとくか。住むとこ決まったら送ってやるよ」

マントがないヴィンセントは見慣れないせいかやたらとひょろひょろしていて、おまけにレッグホルスターが丸見えだ。そこに収まっているのはハンドガンとしては規格外に大きいケルベロスなので、正直物騒極まりない。
シドの視線はヴィンセントを縦に三往復し、思案の末に自らのフライトジャケットを投げ渡した。

「あー……最初の買うまでこれでも着てろ。ショルダーホルスターとかねぇのか」
「あってもケルベロスは入らん」
「だよなぁ。これ置いてくるからロビーでちょっと待ってろ」
「シェルクも行くよね?」
「あっ、はい。お役に立てるかわかりませんが」
「遊びに行くんだよ。お役も何もないって」

英雄たちは他愛ない話に興じながら部屋を後にする。

 

 

ユフィは窓から夕日に染まるエッジを眺めた。これから買い物をして、着替えさせたヴィンセントを連れてセブンスヘブンで飲み会だ。ティファは大喜びで腕によりをかけると言ってくれたし、折悪く遠出をしていたバレットもナナキを連れて戻ってきたと連絡があった。シドはヴィンセントが酒に弱くなったか確かめてやると息巻いていた。クラウドが手に入れてきた秘蔵のワインがあるのだという。リーブも遅れて合流できると聞いている。
ヴィンセントを含めた全員が揃うのは、本当に久しぶりだった。

「楽しみだね!」
「……そうだな」

見慣れたジャケットを羽織る見慣れないヴィンセントの腕を取り、ユフィは跳ねるように街へと繰り出した。

 

POSTSCRIPT:決別と再会

 

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