21.クリスマスプレゼント
「お前は、何か欲しいものはないのか」
「ん? クリスマスにってこと? 今聞いても遅いんじゃない?」
「まあな」
帰り道を歩きながら、ヴィンセントは特に決まり悪そうにするでもなく頷いた。まったくユフィの言う通りで、クリスマスはもう目前まで迫っている。流行を追いがちな子供へのプレゼントなどはとっくに売り切れて手に入らないだろう時期だ。
ヴィンセントに焦りが見られないのは、ユフィへのプレゼントは一応用意してあるからだった。ただそれは”いつも通り”にマテリアなので、貴重なものではあれど目新しさは何もない。
ヴィンセントにとって、相手がユフィである限り、マテリアは決して外さない安全牌だ。だが、いつまでもそれでいいのかという懸念があるのも確かだった。あんなことを言われてしまった後では、特に。
ユフィはしばらくじっとヴィンセントの顔を見つめていたが、やがて得心したようににまっと笑った。
「あ、もしかして恋人になってからは初めてのクリスマスってアタシが言ったの、気にしてくれてるんだ?」
言い当てられてほんのわずかに目線を逸らしたヴィンセントの仕草に照れを見てとり、ユフィは「んふふふ」とこらえきれない笑い声をもらす。ユフィはヴィンセントから長らく子供扱いをされてきたので、たとえささやかでもこういった”恋人扱い”を実感できるだけで、楽しくて仕方がない。
「ん~、でも今年はもう貰ったようなものだしなー」
ユフィがそう言うと、ヴィンセントが今度は微かに眉を顰める。覚えがない、と思ったのだろう。
「ほら、ウータイに一緒に来てくれるって。あれって実質、アンタをアタシにくれたようなもんでしょ」
言いながらユフィは隣をちらりと見上げて反応を窺う。ヴィンセントは首を傾げこそしていないが、どことなく腑に落ちないといった様子だ。
「なぁに。なんか違う?」
「違わないが、それとクリスマスとは特に関係がないだろう」
「いーのっ。タイミングが良かったってことでさ!」
ユフィはヴィンセントの腕を捕まえ、不意に熱くなってきた頬をそこへ押し付けて必死にごまかす。
先日も今も、ヴィンセントのあっさりとした口ぶりは、それが彼にとってはとうに決定されていた事項なのだと物語っている。つまりヴィンセントは”恋人付き合い”のそれこそ一番最初から、ユフィと共にウータイへ来てくれるつもりだったということだ。何でもないことのように差し出されたその決定の重さを、ユフィは胸に刻んでおかねばならない。それはヴィンセントがようやく取り戻した人生の、その先すべてに関わるのだから。
「だからまあ、今年はマテリアで許しといてあげる! でも来年は違う物がいいなー?」
強欲でワガママないつも通りの顔を繕ってユフィが笑いかければ、ヴィンセントは眉を下げて苦笑した。ヴィンセントにとっては難題だ。おそらく自分の命をかけて星を救う選択よりも悩み通すに違いない。それでいい。
これからもいーっぱい、こういう下らないことでばっかり悩ませてやるのだ。何の衒いもなく差し出された苛烈な人生を、そんな平凡で幸せな人生に変えて返してやる。
足を止めず他愛もない会話を続けながら、ユフィは改めてそう心に決めたのだった。
