【FF7】VYワードパレット 01~06 - 2/6

02.クルラーナ(寒い・冷たい/タミル) 埋もれる・息・猫

 

「んもー! そりゃもの珍しい光景なのはわかるけどさぁ」

立派な晴れ着姿だというのにユフィは仁王立ちで頬を膨らませ、上目遣いにヴィンセントを見上げている。ユフィがこういったわざとらしいお怒りのポーズを見せるのは大抵、この後に何らかの交換条件おねだりを持ち出したいという時だ。
彼女の癖には気づいていないふりで、ヴィンセントは降参の意を示すように肩をすくめて見せた。実際、これまで幾度も通った石畳の参道が新年の祝いにはこれほど華やかに様変わりするのかと、ヴィンセントが感心しながら歩いていたことは事実だ。立ち並ぶ出店の数々に興奮したユフィの方が、彼を待ちきれず先へ先へと勝手に進んでいたのだということは、ひとまずおいておく。

「待たせたか。すまないな」
「べっつにぃ~?」

ユフィは白い息を吐き、拗ねるようにそっぽを向いた。ショートカットでは覆いきらない華奢な首筋がいかにも寒そうに見えた。雪の気配もなく晴れ渡っているにしても、ここウータイとて真冬なのだ。ヴィンセントは自分の巻いているマフラーを外しかけ、つかの間逡巡した。普段の服装であれば迷うこともないのだが、今相手が纏っているのは煌びやかな伝統衣装だ。男物のマフラーというアイテムを足すことで台無しになりはしないだろうか。
ヴィンセントの様子を見ていたユフィがんふふと笑う。

「それ、貸してくれんの? 巻いてくれる?」

ヴィンセントは頷き、マフラーを外してふわりとユフィの首元にかけた。たっぷりとした袖が邪魔そうな彼女の指示に沿ってくるくると巻き付ける。仕上げにユフィがリボンのように端を結べば、もうそれが数分前までは無難な男物のマフラーだったとは信じがたい出来映えだ。こういった面でのユフィのセンスは大したものだった。
温かなマフラーに埋もれたユフィは、ヴィンセントの無言の賛辞に満足げな笑いを洩らすと、おもむろに片手を突き出した。

「ちゃんとエスコートしてよね!」
「仰せのままに」

ヴィンセントは右手の手袋を外しユフィの手を取った。ヴィンセントに比べれば小さな手から、彼女の体温が伝わってくる。
笑い合い、手を繋いで仲睦まじく石段を上り始める二人を、出店の傍から野良猫が見送っていた。

 

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