2.チョコ
口に大きなトリュフチョコを放り込み、ユフィが呟いた。
「ん、おいしい。けどわりとお酒の風味する」
「ユフィ、そもそもこの商品名は酒の名前だ」
パッケージに書かれた文字を、ヴィンセントの指がなぞる。
「えっそうなの? なんかオシャレな長い名前だと思ってあんまり気にしてなかった」
「隣にストロベリー味もあっただろう」
「一袋全部イチゴは飽きるかなと思って……」
ヴィンセントが呆れたように小さくため息をつく。
ユフィがWROで同期の誰かに勧められたのだと言って、さほど確かめもせず買い物カゴへ放り込んでいたものだ。飾り気のないパッケージには茶色いごろごろしたチョコレートの写真があるだけで、見た目では確かに酒入りとはわからないかもしれない。いや説明はちゃんと書いてあるのだが。
ユフィは酒があまり得意ではない。とはいえ二個目が口の中へ消えたのを見るに、この風味程度なら特に問題はないのだろう。
「ヴィンセントも食べてよ」
ココアパウダーをまとったチョコレートの塊がヴィンセントの唇に押し付けられた。一口で食べるには少し大きいのではないだろうか、そう思いながらヴィンセントは慎重に唇を開く。待ちきれないようにぐいぐい押し付けてくるのを、思わず身を引きながらなんとか受け入れた。
「ヴィンセント、口ちっちゃい」
「小さくはない」
大口を開ける習慣がないだけだ、とヴィンセントは内心で反論した。つくりでいえばユフィの方がよほど小さいはずだ。24cmもの身長差があるのだから。
ヴィンセントの目の前で、ユフィはかぱっと口を開けて、三個目のチョコレートを放り込んだ。小さな舌がぺろりとひらめいて、唇を舐め取る。
「もいっこ食べる?」
じっと眺めていたせいだろう、そう問われたヴィンセントは首を振る。このチョコレートはヴィンセントには甘すぎた。口溶けや風味は悪くないのだが。
「イチゴも買えば良かったなぁ」
「気に入ったのか」
「んん、食べ比べしてみたくなったっていうか」
よく喋る唇が、喋るためでなくかぱっと開く。放り込まれるチョコレート。小さな歯並びが垣間見え、閉じられる唇。
「わ、なに、ちょっ!」
突然顔を近づけてきたヴィンセントに、ユフィは大慌てだ。思わず仰け反った背をすかさず支えられ、反射的にぎゅっと目をつむる。
予感通りに、噛みつくようなキスが降ってきた。
「んんっ!」
ヴィンセントの口内は肌より熱い。唇そのものを食むように貪られ、息を吐いたところを舌先で割られて歯をなぞられる。口の中のチョコレートを舌が掬って、そして始まりと同じくらい唐突に離れていった。
「とっ、突然なに!」
「小さくはないだろう」
すまし顔でそう言いぺろりと自分の唇を舐めたヴィンセントに、ユフィは真っ赤になって叫んだ。
「そんな証明求めてない!」
